Googleだけが検索エンジンじゃない!
◆Web検索はGoogleだけじゃない
Googleと言えば、Web検索の代名詞だ。ググるという動詞になっていることから、そのことはよく分かる。しかし、Web検索はGoogleだけではない。他のWeb検索サイトも存在する。
2020年12月時点での、Web検索エンジンの世界のシェアは Google が76.13%、Bing が11.12%、Baidu が9.27%で三強となっている。その次に Yahoo! の1.85%、Yandex の0.67%、DuckDuckGo の0.54%と続く(マイナビニュース)。
DuckDuckGo は、0.54%と比率は小さいが、世界で6番目のシェアのあるWeb検索エンジンになっている。
Google 以外の検索エンジンは、どういったものなのか知らない人もいると思うので、簡単な解説をしておく。Bing は、Microsoft が提供する検索エンジンで、Google に劣らない様々な機能を備えている。
Baidu(百度)は、中国で絶大なシェアを持つWeb検索エンジンだ。中国の圧倒的な人口を背景に、世界での知名度は低いが、大きな利用者を抱えている。
Yahoo! はかつての覇権サイトで、凋落ばかりがクローズアップされるが、いまだシェアは大きい。
Yandex はロシアのWeb検索エンジンだ。ロシア国内で大きなシェアを持っている。中国といい、ロシアといい、自国のWeb検索エンジンが大きなシェアを持っているのは強いと感じる。
こうしたサイトに続いて6番目の位置に付けている DuckDuckGo は、アメリカ合衆国ペンシルベニア州のパオリにある。
DuckDuckGo は、プライバシーの保護を謳っており、他の企業のように個人情報を収集してお金を稼がない方針で運営している。同社は、多くの寄付を受けて成長した。また、広告やアフィリエイトを利用して収益を上げている(DuckDuckGo)。
同サイトは、プライバシー意識の高い人と、その利便性を評価した人を中心に、シェアを広げている(DuckDuckGo)。
今回は、この DuckDuckGo について話をしよう。
◆DuckDuckGoはどんな検索エンジンなのか
DuckDuckGo は、Gabriel Weinberg により2008年に設立された。DuckDuckGo は、複数の検索エンジンのデータを使って検索結果を出す、マッシュアップと呼ばれる手法を採用している(Ostatic Blog)。
現在の DuckDuckGo は、400を超えるソースから結果を取得して、必要に応じて検索結果を提供している(DuckDuckGo)。
このサイトの成長を見ていこう。スタートから3年後の2011年、Gabriel Weinberg は最初の従業員を雇い、事業の拡大を始めた。翌2012年2月には、1日に100万回の検索数に到達する。2013年6月には、検索数は300万回に増える。
翌2014年には、Safari や Firefox に DuckDuckGo が組み込まれる。さらに2015年6月には、1日に1000万回の検索に到達する。また同年12月には、累計検索数が100億回を突破した。
DuckDuckGo の成長は順調に続き、2017年11月には、1日に2000万回の検索を越える。2018年には、モバイルアプリや、ブラウザ拡張機能を出して、プライバシー保護の範囲を広げる。そして2019年の2月には、月あたりの検索数が10億回を越えた。
2020年6月には、累計検索数が500億回を突破する。そして、2021年1月に、1日あたり1億回の検索数に到達した(DuckDuckGo)。
DuckDuckGo が急速に普及したのは、プライバシー保護という意識が高い人向けの機能を持つからだけではない。Bangs という、短いフレーズで特定の情報を検索する機能が便利という理由で使っている人が多い。
Bangs は、「!」と「短いアルファベット」で検索対象を制限する。たとえば「!w」なら Wikipedia 、「!a」なら Amazon といった具合だ。この Bangs は非常に多く、この記事を執筆している時点で、13,564種類も存在している。それらはカテゴリーごとに分類されており、DuckDuckGo !Bang のページから探すことができる。
たとえば、エンターテインメントのオーディオのカテゴリーには、「!hmiku」(初音ミク Wiki)といった Bangs もある。
また、Facebock なら「!fb」、Twitter なら「!tw」で検索が可能だ。「!5ch」(5ちゃんねる)もある。様々なサイトを検索する Bangs が用意されている。
翻訳も Bangs からおこなえる。「!dpl」(DeepL)のような検索機能が大量にある。また、Google Maps で検索したいなら「!maps」でいける。
この Bangs を使いこなすことで、あたかもパソコンのコマンド系ランチャーを使うように、Webの各種情報にアクセスできる。こうした機能が、マニアの心をくすぐっているところが大きい。
また、Instant Answers という機能があり、1235種類ある。たとえば「play 2048」と検索すると、『2048』のゲームを遊ぶことができる。
「12 as binary」と検索すれば「00001100」と、2進数に変換した値を返してくれる。「c cheat sheet」と検索すれば、プログラミング言語であるC言語のチートシートを表示してくれる(チートシートは、カンニングペーパーの意味から転じて、覚えることをまとめた表のことだ)。
こうした、検索キーワードによるちょっとした機能は、Google にも存在するが、DuckDuckGo の機能の数は膨大だ。同サイトは、このような非常に豊富な機能で、ユーザーの心をつかみ、シェアを広げてきた。
◆独占を許さない、代替案のある世界
ITの世界は、現実の世界以上に、少数の勝者が圧倒的なシェアを得ることが多い。古くは、OSの Windows がそうだった。またWebブラウザのシェアを Internet Explorer が占めていた時期もある。現在は、Google Chrome が7割近いシェアを持っている。
Web検索とWeb広告のシェアは Google が占めている。また、モバイルOSは、Android と iOS の2つしか事実上生き残っていない。
ある分野を1社が独占、あるいは少数の企業が寡占したとき、その影響力が悪い方に行使されることはよく知られている。そのため独占禁止法などが存在している。こうした独占や寡占を避けるために、第2、第3の選択肢はあった方がよい。
Web検索エンジンを作り、全世界のデータを網羅するのは、非常にお金が掛かる。DuckDuckGo は、他の検索エンジンを利用したり、自社のクローラーを使ったりして、Web検索を提供している。そうした体制のために、完全に大手から独立したWeb検索エンジンというわけではない。
全世界ではなくてもよいので地域毎にでも、巨大企業から独立したWeb検索エンジンがあった方が健全だと思う。収益化の問題があるが、独占を許さない代替案のある世界が望ましいことは、言うまでもないだろう。
<文/柳井政和>
【柳井政和】
やない まさかず。クロノス・クラウン合同会社の代表社員。ゲームやアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500万ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社『レトロゲームファクトリー』。2019年12月に Nintendo Switch で、個人で開発した『Little Bit War(リトルビットウォー)』を出した。2021年2月には、SBクリエイティブから『JavaScript[完全]入門』が出版される。
(出典 news.nicovideo.jp)
【検索エンジン『DuckDuckGo』 1日1億件の検索クエリを超える】の続きを読む